社内を上手に巻き込んでプロジェクトを進めるには? 合意形成(コンセンサス形成)の重要性
2017/12/30
[2017/11/1 メルマガ配信記事:担当 信國大輔]
出典:写真AC
信國です。最近、某上場会社の事業推進を手伝っていて、様々なプロジェクトの会議ファシリテータをやっています。
最初は1つのプロジェクトの支援だったのですが、徐々に他の部門長や経営者からも直々に声がかかるようになり、今では5〜7つほどのプロジェクトを進行支援させていただいています。
次々と声がかかる理由として、同社のマネージャの方などから言われる言葉は、「信國さんが入ると、上層部から現場までスムーズに合意(コンセンサス)が取れて、プロジェクトが進みやすくなるんですよ。」というものです。
ファシリテーションを仕事としているわけですから当然といえば当然なのですが、今回はプロの視点から社内を巻き込んで上手にプロジェクトを進めるコツについて、
「合意(コンセンサス)形成」
「事業推進・プロジェクトマネジメント」
というテーマで2回に分けてお話できればと思います。
あなたがプロジェクト推進を任されるマネージャクラスの方なら、2回でお伝えする手法をぜひ参考にして取り入れてみてください。
経営者の方であれば、社内にこれをやってくれる部下がいない場合、マネージャクラスの方と同じく自力で実践されてみるのもありですが、正直、経営者は非常に多忙なので、私は「合意形成」や「事業推進」が経営者の仕事とはあまり思っていません。経営者の仕事は、好きなことを思いついた時に自由に言い放って、最終責任だけ取るのが仕事だと思っています。経営者の仕事はそれで充分だと思っています。
なので、よく支援先の社長さんにいうセリフは、「あとの細かいところは、私を含め下々(しもじも)にお任せください。うまいこと進めておきますので!」という感じです(笑)本来、社員も外注もそのために雇われているわけなので・・。
ですので、「こういう部分も請け負えるパートナーがいるんだな」というのを知っていただき、外注として上手く活用というのを今後検討いただく参考にするのも良いかと思います。
それでは本題に入ります。
そもそもなぜ多くの会社でプロジェクトが上手く進まないのか?
コツのお話をする前に、まずはそもそもなぜ多くの会社でプロジェクトが進まない、あるいは進みづらくなるのか?を、お話したいと思います。
よほどの大手でないかぎり、多くの場合、新しいプロジェクトというのは上層部発信、経営者発信でスタートすることがほとんどでしょう。
例えばこんな要望です。
「営業管理システムを導入してほしい!」
そして、それと合わせて断片的に手段の話が降りてきます。
「A社のシステムが評判いいらしいから検討しろ。」
「過去のデータを蓄積して活用しろ。」
「とにかく迅速に導入しろ」
そんな感じで関係各位が集められ、プロジェクトがスタートします。
ところが、専門のパートナーまで巻き込んでいるにも関わらずプロジェクトが思うように進みません。また、仮に進んだとしても当初上層部が期待していたような効果を得ることができず、失敗に終わります。
なぜでしょうか?
これはもう理由は明白で、原因は「発案者以外そのプロジェクトの背景や目的・ゴールを知らないから」なのです。
ですから、当然プロジェクトメンバーの意欲が高いわけもなく、面と向かっては言いませんが、心の中では「あーあ、また社長(あるいは上司)のわがままに付き合わされて大変だ。」としぶしぶやっていることがほとんどでしょう。
これではどんなプロジェクトだろうと上手く進めたり成功させられるわけがありません。
ところが、一方の発案者、つまり経営者もしくは上司は、説明不足による惨状に気づいてもいないことが多いです。
理由は様々あり、1つは発案者の頭の中では、背景も目的もゴールも全て揃っているため、この説明不足に悪気なく気づかないパターン。やってないのに説明した気になっている人すらいます。「説明しなくても当然それぐらいは理解しているはず」「そんな説明めんどうくさい。説明しなくても理解してくれよ」というパターンもあります。
頭が良いのに「自分が優秀である」という自覚が薄い社長さんなどに起こりやすいパターンです。自分のやっているレベルが当たり前なので社員への最低限のハードル(=期待)が高いわけです。
また、発案者自身が細かいことを考えるのが苦手というパターンもあります。
「一言、営業管理システムいれたいって言えば、あとは全部うまいこといい感じでやってくれよ・・」と内心思っている社長さんなんかも多いのが実情です。営業系の社長さんにはこのタイプが多いかもしれません。
プロジェクトの第一歩。本当の「合意(コンセンサス)形成」とは?
このように何かしらの理由により説明不足になっている発案者の場合、(特に経営者が多いのですが)信國を大変重宝してくれます(笑)。
私が一体何をやっているかというと、発案者である社長さんなどが「◯◯をやりたい!」言いだした瞬間に、真っ先に「ぜひ詳しく聞かせてほしい!」とヒアリングします。
この時、ヒアリングの姿勢がとても重要で、「ぜひその素晴らしい案をもっと聞かせてくれませんか?」という姿勢で望むと、だいたいの相手は気持ちよく色々と話し始めてくれます。たとえ頭が良くて「それぐらい理解してくれよ」と思っている社長さんでも、このような姿勢で聞かれたら、ついつい色々話してしまうものです。
次に質問の仕方を工夫しています。社内で合意(コンセンサス)を取るために必要な要素を網羅的に聞きます。ざっと挙げるとこんな感じです。
- その案をやりたいと思うに至った背景・課題感
- その案を実現することで期待する効果・ゴールイメージ
- いつぐらいまでにどこまでやりたいかのスケジュール感
- どこから手を付けたいのか?のステップ整理
- どれほどの労力とコストを掛けたいかの予算感
ここについては、先程お伝えしたように「細かいことを考えるのが苦手な方」や、「自分で自分の考えの整理がついていない方」もいらっしゃるので、ただこれらの項目を聞くだけでなく工夫が必要です。
話したりしている時の表情などを見ながら、困ったり、めんどくさそうにしている雰囲気が出たら早めに察知して、「◯◯についてはいかがですか?」というようなオープン・クエスチョンではなく、ある程度回答案をこちらで想定して考えた上で、「目的については◯◯というのが一番大事とお考えですか?」「この効果は、◯◯ということかなと思いましたが合っていますか?」というようなクローズド・クエスチョンに切り替えます。
このようなやり取りを通して、発案者の中にあるものを気持ちよく吐き出させつつ、肉付けをしていきます。
さらにこのヒアリングをインプットにしながら、追加して後日インターネットなどで情報収集をし、図表や一覧表形式にまとめたりして、発案者以外のプロジェクトメンバーが、理解できヤル気が湧く資料にまとめ上げています。
さらに、社内へのプレゼンも代行します。もしかしたら「プレゼン代行」というよりは、「リーダーシップ代行」という方が正しいかもしれません。
主にPowerPointを使う事が多いですが、まとめ上げた資料を使って関係各位にキックオフという感じで説明会を行います。
この時、プレゼンする姿勢も重要で、「代行」とは言いながらも自分が発案者だと言わんばかりの情熱でお話しています。このようなプレゼンは熱を伝えることも非常に重要で、単に論理的な説明にとどまらず、
「ああ、この人なら今よりもっと良くしてくれそうだ」
「この人は、自分たちのことを本気で考えてくれているな」
「この人についていけば明るい未来がありそうだ」
と思っていただけるように意識しています。
関係各位がほぼ本音でこのような気持ちになってくれさえすれば、とても良いカタチでプロジェクトをスタートできるのです。これが本当の「合意(コンセンサス)形成」です。一見すると面倒くさそうと思うかもしれませんが、ちゃんとやると非常に効果的です。
以前、社員が数百名いる東証二部上場企業で、50名近くの幹部・マネージャ陣に対し、社長に代わってその会社の今後の事業戦略プレゼンを行ったこともありますが、その会合のあとに、その日初めてお会いした幹部・マネージャの方々から、
「非常にわかりやすかった。今までモヤモヤしていたのがすっきりした。」
「ヤル気がわいた。見通しが明るくなった。ぜひ成功させたくなった。」
「ほかにこれも相談させてほしい。」
などの言葉をいただき、その後の事業推進も非常にスムーズに行きました。
最初にこれをやっておくと、みんなが背景や課題やゴールを理解しているので、1つ1つのタスク処理の精度が高く、細かい問題解決や連携もとてもうまくいくのです。大きい会社ほどこの恩恵は大きいかもしれません。
合意形成のその後は?
さらに、合意形成だけでなく、多くの場合はその後、主要メンバーを巻き込んで事業推進・プロジェクトマネジメントもお手伝いしています。「合意形成」によって、みんなが納得し情熱が湧いたとしても、プロジェクトの進め方が下手だと頓挫します。
第2回はこの「事業推進・プロジェクトマネジメント」のコツをお伝えできればと思います。