COO代行信國大輔のCOO代行実践録

支援実績100社以上、上場成功実績3社、ベンチャー・中小企業専門のCOO代行が、事業推進や組織体制構築、新規事業企画、プロジェクトマネジメント、新規採用のコツ、社員のモチベーションアップ、マネージャ育成・チームビルディングなどあらゆる経営課題の実践的な企業経営ノウハウを解説。

中堅・中小企業でよく発生する「会社組織の問題点」と、その対策

      2017/12/30

社長と社員の能力差が大きい

これは、本当によくある傾向で、このことが、会社組織の問題の根本的な原因となっているケースも多々あります。

創業社長であれ、2代目社長であれ、社長の能力と努力によって、会社が成長・繁栄してきているのが、中堅・中小企業によくある実情です。大企業であれば、「社長の頑張り」だけで成長できることは限られているため、既に組織化が進んでおり、権限移譲なども進んでいることがほとんどです。しかし、100名以下の会社ですと、まだまだ社長の頑張りだけで、良くも悪くもどうにかなってしまうので、どうしても「社長次第」という状況からなかなか抜け出せません。

社長が、営業も見るし、商品開発も見るし、財務も見るし、調達も見るし、そうやって事業面を支えているケースは多々あります。社長の、部下への接し方、リーダーシップ、コーチング能力などが高くないケースもよくありますが、それを差し引いても、実際に、社長の能力と努力に依存して、事業が成り立っているわけです。

この状況では、多くの問題が引き起こされてきます。

まず、実際には、社長の能力と努力で事業が成り立ち、雇用が守られているわけですが、社員からすると、社長の「リーダーシップの低さ」「コーチング能力の低さ」の方が気になってしまって、不満が募っていきます。

また、中堅・中小企業の場合、多くは採用力が高くないので、それほど優秀な人材を、高収入で迎えられるわけではありません。そうすると、能力の高くない社員を使って、事業を進めていかなければならないわけですが、優秀な社長からすると「なんで、そんなこともできないんだ!」と腹が立つようなことばかり、日々起こります。

当然、社長は、そういった社員たちを叱っていきます。しかし、ここに罠が潜んでいて、普通のスキルレベルで社員を叱っていくと、社員の【依存性】がますます高まっていくことになるのです。叱られたい人はほとんどいませんから、叱られないように仕事をするようになります。そうすると大事なことは「社長は何を叱るのか、叱らないのか、を知ること」になります。自分で考えて仕事をするのではなく、叱られないように仕事をする。

叱られる確率を下げる一つの方法は「余計なことをしない」ということです。ですから、できるだけ何もしないようにする。何かをすれば叱られるわけですから、できるだけ職場でひっそりと、社長に見つからないように過ごしていく。このような状態を生み出していってしまいます。

当然、そんな状態の社員がいれば、経営者としてはより一層叱りたくなります。「ちゃんと仕事しろ!」と。しかし、そういった抽象的な叱咤では、社員は何をしていいのか分からないので、萎縮し、ますます、ちゃんとした仕事をしなくなっていってしまう、こういう悪循環になっていきます。この悪循環に陥っている中堅・中小企業はたくさんあります。

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※上の図は「システム思考」でいうループ図ですが、自社の問題を視覚化すると自分たちの理解が進むだけでなく、問題と人格を切り離すことが容易になります。組織マネジメントに必要な「システム思考」を身に着けたい方は、「学習する組織(ピーター・センゲ著)」や弊社講座「社長のための組織マネジメント講座」をご覧ください。

組織化と硬直化

また、事業が拡張して、社員数が増えてくると、これまた「会社組織」特有の問題が発生してきます。効率的に業務を進めていくために、役割分担をして自分の専門分野・担当分野の仕事に専念にしていくようになります。しかし、その結果、連携してお客様に価値を提供すべきなのに、他部署がどんな仕事をやっているのか全然分からずに、ただ自分の担当分野だけをやっていくことになります。

例えば「家でホームパーティを開く。カレーライスをふるまう」というプロジェクトがあったとして、肉屋チームと、八百屋チームと、スパイスチームに別れて買い物にいくことになっていたとします。プロジェクトのゴールが共有されていて、チームで連携して動いていれば、例えば「肉屋チームから連絡があった!今日は肉屋が閉まっているので、魚屋にいく!ビーフカレーではなくて、シーフードカレーにしよう!」「じゃー、スパイスはシーフードカレーに合うものにしよう!」などと動いていけるわけです。

しかし、他部署のやっていることに無関心で「自分達は、指示された通り、ビーフカレー用のスパイスを買ってくることこそが仕事だ」と思っていると、実際にそれに専念してしまい、最終的にパーティ参加者に不味いカレーをふるまって不興を買ったとしても「我々は、ちゃんとやるべき仕事をした」などという風になってしまうのです。

ですから、組織が大きくなってきたときに「全体のゴール」を常に意識し、「他部署との連携を密に取る」ということを大切にしていかないと、こういった官僚的な、硬直的な仕事が社内に蔓延してくることになります。

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では、どうすればよいのか?

まず「怒る⇒思考停止になる⇒ますます怒る」という悪循環を断ち切らなければいけません。「考えさせる⇒考える力が高まる⇒ますます任せられる」という好循環に持っていくように意識をすべきです。

考える力、思考力を高めるのに効果的なのは「教える」「叱る」ではありません。「問う」ということが効果的です。教えてしまった方が、その場ではすぐに効果が出ますが、教わってしまうと自分で考える姿勢はむしろ低下していってしまいます。「どうすれば上手くいくか?」「どうすればもっと顧客に喜ばれるか?」「どうしたら失敗は繰り返さないか?」と問う、というコミュニケーションに切り替えていくことが重要です。

最初の頃は、教えたくなるでしょうが、そこをぐっとこらえて「問う」ようにしばらくしていくと、社員の「自分で考える姿勢・力」が高まってくるのが実感できるようになります。(これらを全般的にコーチングスキルと呼びますが、コーチングスキルについては別稿で詳述します)

こうしていくことで、自ら考えて動く社員が増えてきます。そうすると「自分の仕事はとにかくビーフカレー用のスパイスを買うことだ」というような思考停止になる社員が減ってくるわけです。

そして次に「全体のゴール」「他部署との関係性」を理解する時間をしっかりと取るようにします。多くの中堅・中小企業では、業務効率を追求した結果「自分の部署の仕事にとにかく専念する」というような状態になっています。100%自分たちの仕事の事だけ考えているような状態です(評価制度がそれを助長してしまっていることも多々あります。評価制度についても別稿で詳述します)。

この100%のうち、10%でも「全体のゴール」「他部署との関係性」を理解する時間に振り分けます。他部署と合同のワークショップを行い「部署を超えて、全体のゴールは何か?」「それぞれの部署の仕事の、大変さや苦労はどんなところにあるのか?」「それぞれの仕事ぶりが、どのように影響しあっているのか?」っといったことを共有・探求していく時間をとるのです。

実際に、びりかん社ではこういった支援をしていって、部署間の連携が高まり、顧客への提供価値が上がり、売上が伸びたケースが多数あります。

このように「短期的には、成果に結びつかないこと」「今すぐ、目の前の業務が処理されるわけではないこと」にしっかりと時間を割いていくことで、中長期的に見て組織力が強化され、それが業績にも反映されていくことになります。組織力強化にご興味ある方は「社長のための組織マネジメント講座」を参照ください。

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 - 中堅・中小企業における【社長依存の卒業】, [執筆者]石川英明 , , , , , , , ,