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第一回:社員1人ひとりの個人ビジョンから始める新時代の経営

      2017/11/11

従前の「評価」を見直すトップ企業

これまで経営の基本として「会社の方針が掲げられ」「方針に賛同する人材を採用し」「方針にそって教育し」「方針への貢献度によって評価する」ということが常識として存在していたかと思います。

これは、「組織」を主におき、「個人」をそれにいかに効果的に従属させるかという思想に基づいている、と言うことが出来るかと思います。

この思想は、「和を以て貴しとなす」日本においてのみでなく、個人主義的な欧米においても、ヒエラルキートップの方針に、如何に構成員を従わせるか、という意味において、近代経営の万国共通的なモデルであった、と言っても言い過ぎではないように思います。

ところが、徐々に今この常識に変化が起きつつあります。その変化を表す一つの象徴的な出来事としてFortune500社のうち数割が「段階評価」をやめ始めているということがあります。

これは「方針への貢献度によって評価する」を最善と見なさなくなってきている証左とも言えるかもしれません。では、なぜそのような変化が起きてきているのでしょうか?

スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエック教授の研究による「Growth Mindset(※)」という概念の影響もあるでしょう。

※Mindset理論:人間には大きく分けてFixed Mindset(固定思考)とGrowth Mindset(成長思考)という二つのMindsetがあり、「知性や創造力は天性のものであり、自分の力ではどうにもならないもの」と考えている人は多いが、それこそが人の限界を決める勘違いであり、「成長する考え方」を持つと人は自分の知性や能力を伸ばしていくことが出来るというもの。

 

グロースマインドセット

 

また、これは以前から言われてきていることですが、金銭のような外的報酬に基づく「外発的動機」ではなく、個人の好奇心や情熱によってもたらされる「内発的動機」の重要性が、より着目されてきているとも言えるかもしれません。

 

個人の貢献度を最大化するために

もちろん会社は個人に最大限のパフォーマンスを発揮してもらいたいものです。しかし一方で、個人の最大限のパフォーマンスが、全て会社としての方針に貢献するものとは限りません。

とても単純化した例で言えば、システム開発会社が社員のエンジニアに求めるパフォーマンスは「システム開発力」であって、例えば社員が「絵画を描く才能」を発揮してもらっても、会社としては全く利益をもたらしてもらえないわけです。

しかしこの構造は、個人の側からすると、大変息苦しいというか、可能性を狭められた状況を生み出します。個人としては「システム開発に5割の時間を割いて7割の収入を得て、絵画に5割の時間を割いて3割の収入を得ることが最高に幸せだ」ということがあった場合に、これまでの経営システムでは、そのような人材に、個人の側からみた「最高のパフォーマンス」を発揮させることはできませんでした。

「絵画など描いてないで、システム開発に10割の時間を割いて収入を得て下さい。」

これが今までの多くの企業の論理であったかと思います。ひとりの人間を雇ったからには、その人間の100%の努力なり成果なりを、1社のために使ってもらわなければならない、という囲い込みの思想です。(最近は、一部の企業で副業OKなどの対処策も出てきてはいますが)

ところが、面白いもので、人間は「本当は5割の時間を絵画に割きたいのに、割けていない」という気持ちがあるときに、嫌いではないはずのシステム開発への情熱をも失わせてしまうところがあります。

この構造が社会全体に行きわたっていると、社会全体の活力、生産性というものが下がらざるを得ません。働く人のほとんどが「仕方ないから、やりたいことは諦めて、お金のために頑張ろう」という、積極性を欠いた姿勢で労働に従事せざるを得なくなるからです。

お金で創造性は引き出せない!

会社組織作りをする際に、その状態をイメージさせる例として「全員が優勝目指して一丸となっているプロスポーツチーム」などがよく用いられます。

確かに王道は「会社のビジョンが掲げられていて」「そのビジョンに共感する人材が入社してきて」ということができれば、理想的です。

しかし、実際にはそうはならない。

なぜならプロスポーツチームならば、とくに監督が頑張らずとも選手全員に「勝ちたい、上手くなりたい」という共有の想いがすでにあり、「優勝する」といった目標は、ある意味とても共有しやすいというところから始められます。

しかし、会社組織のマネジメントはそうはいかない。もっと変数は多く、多様性が高いのです。

結局プロスポーツチームのようにはいかないので、「お金で釣る」みたいなことをし始めます。

しかし「お金で釣る」ことが、個人のパフォーマンスを最大化しないことは、古くはハーズバーグの「動機づけ衛生要因理論(※)」でも証明されており、最近ではダニエル・ピンクの著書である「モチベーション3.0」において、むしろお金で釣ることは人の創造性を低下させることが描かれています。

※動機づけ衛生要因理論:アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した仕事における満足と不満足を引き起こす要因に関する理論。人間が仕事に満足感を感じる要因と不満足を感じる要因は全く別物であるとする考え方。給与・報酬は、不満足を感じる要因(衛生要因)に属し、充足させても不満足感が減少するだけで積極的な満足感を増加させることはないと考えられている。

社員の夢や目標に経営を合わせる

では、発想を逆転させてみたらどうでしょうか?

「組織の視点から、個人に如何に貢献してもらうか」ではなく「個人の視点から、如何に社会全体に貢献していくか」という発想です。

私達びりかん社は、極端にこの考えに振ってみて、会社を作ってきてみました。お世辞にも順風満帆であったとは言えませんが「個々人のパフォーマンスを最大化する」という意味においては、ある程度成功してきた、と自負しています。

私達は常に「あなた自身の夢や目標は何か?」というところから経営を始めます。そして社員個人の夢や目標が既存事業にあれば、その仕事をしてもらい、なければ新規事業なり、副業なりでやってもらう。その形をとってきましたが、一定の成果は出せたと思っています。

実際には、クライアント企業に全く同じ組織運営を移植しているわけではないのですが、しかし一方で、自社で取り組んできたノウハウは、多くの企業に役立てていただけることも実感しています。

「あなた自身の夢や目標は何か?」と問い、その夢や目標に対して、会社がどのような貢献ができるか(どのような機会を提供できるか)を考える。そのような姿勢を経営陣や上司が持った時に、社員が驚くほどパフォーマンスを高めてくれるケースを、多数目撃させてもらってきました。(もちろん、姿勢だけでなく、評価や異動などをどうするかの具体的な方法論も非常に重要です)

勿論、このアプローチ方法には一部の人の離職リスクが高まるなどのデメリットもあります。しかしそれ以上に、少なくとも会社に在籍している間、とても高いパフォーマンスを発揮してくれるメリットがあります。また、もっと言うと「パフォーマンスの低い社員を雇い続けなければならない」リスクは低減します。

そして、「あなた自身の夢や目標は何か?」といった個人ビジョンを重視する会社ほど、優秀な人材は魅力を感じ、彼らの多くを引き付けるのです。近い将来、そういった価値観をもった企業グループが、多くの人の情熱と多様な才能を開花させ、競争力を高めていくことになるかもしれません。

冒頭の例で言えば「画廊もやっている、システム開発もやっている」という企業グループこそが、Aさんにとっては、最も個人のパフォーマンスを最大化できる場所だからです。

次回以降、これらを実践していく上で重要な「公私調和」「個人の変化」についてもお伝えできればと思います。

 

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 - 一歩先行く経営人事のあり方・次世代型会社組織運営, [執筆者]石川英明