びりかん式経営その5:報酬制度面は徹底的に厳しく
2017/05/10
びりかん式経営では、会計情報は社内ではフルオープンです。誰がいくらの給料をもらっているのか、社長がいくら経費を使っているのか、個々人の月間の収支は赤字なのか、黒字なのか、すべてオープンになっています。
現在のびりかん社のガイドラインでは「売上の4割を会社に入れて、6割が自分達の給料になる」としています。月収を60万円に設定している社員は、単月の黒字を達成するには、100万円を売り上げる必要がある、ということです。
そして、この「黒字である」ということは、社内で最も厳しく共有されているルールと言えます。ちなみに「半年間単月赤字が続いた場合は給料を減額する(累積黒字が残っている場合は除く)」というガイドラインにしています。
一般的な会社では“減給”というのはほぼ適用されないことになっていますが、びりかん式経営では「給与の減額はあり得る」ということを大前提としています。
ですから、月収60万円の生活水準を守りたければ、毎月担当売上を100万円以上稼ぐ、ということは必須ということになります。(前述したように、副業と合わせて60万円も可です)
案件に対する、最大の品質管理要素はここにあります。というよりもびりかん式経営では、これ以外の品質管理を放棄しています。上司が部下の仕事ぶりを監視する工数などを削減して、極力無駄のない労働環境にしようとしています。
また、社員の向上心の刺激といった面も、この仕組みに頼っている面が多くあります。「もっと給料を高くしたい」と思ったら「もっとお客さんに請求できるようにならないと」「そのためにはもっと価値を感じてもらわないと」ということを、一人ひとりが自然と考えられるような環境であることを、大切にしています。
ちなみにこの「会社4割:給与原資6割」という比率自体も、対話しながらガイドラインとして収束していきました(あくまでガイドラインであり、今後修正になるかもしれません)。
そして、4割のお金の使い道もフルオープンなので「そうかぁ、オフィスの賃料にこれくらいかかってるんだぁ」「広告費にこれだけかかってるんだぁ」「借入金の返済って結構大きいね」ということもすべて見えたうえで「よし、今は4対6でいきましょう」とみんなで話し合って合意したものです。
さて、さらにチームでやっている案件は、チームメンバー内での分配についてもチームメンバー同士で決めることになっています。
売上100万円で、給与原資が60万円の際に、関わっているメンバーが3人いる、という場合、20万円ずつなのか、40万円と15万円と5万円なのか、などは、当事者たちで話し合って決めます。
例えば、私が関わっているある案件は、60万円のうち、コンサルタントの私が30万円(50%)、同行している営業の人間が24万円(40%)、マーケティングの人間が6万円(10%)、となっています。
また別の案件では、給与原資20万円のうち、コンサルタントの私が18万円(90%)、営業の人間が2万円(10%)、というものもあります。
前者の案件は「Webで集客してきたお客さんをクロージングして、営業はコンサルのサポートとして同行し続ける」という案件で、後者の案件は「営業がとってきたが、とってきたあとはすべてコンサルタント一人でやっている」という案件です。
今は、ガイドラインとしては一番基本の「Webから問い合わせが来て、営業が受注し、コンサルタントがプロジェクトを進める」のケースでは5:4:1というのがガイドラインになっています。そこから「この案件はちょっと比率を変えたい」ということがあれば、話し合うということにしています。
ガイドラインなしに、毎回ゼロベースで話し合いをするのは、非常に負荷が大きいため、ガイドラインを置いています。
このガイドラインの設定には、正直かなり苦労もありました。(現在では、この苦労を大幅に減らして進められるプロセスを見出しています)というのも「本当に、マーケティングの価値は10%なのか?5%ではないのか?20%ではないのか?」といったことに関しては、どれほど話し合っても正解などないのです。無限にでも話し合えてしまうため「だいたい、おおよそ、違和感はそんなにない、くらいにしておこう。こんなに時間を使うなら、お客さんのために使って、売上の総量を増やした方がいい」ということ自体が、大切にされています。
社員一人ひとりの「自由」は最大限尊重されます。やりたいことをやればいいし、やりたくないことはやらなくていいのです。しかし一方で「責任」も一人ひとり明確にあります。「自分が欲しい給料は、自分でちゃんと稼ぐ」ということです。
社内ベンチャー制度
びりかん式経営では、社員にとって“累積黒字”を持つことができます。そしてこれは、昇給の原資にすることができますが、“事業への出資”をすることもできます。
例えば何かオンラインビジネスを始めようと、ホームページを作る初期費用100万円を、自分の累積黒字から出資することができます。
そして、そのオンラインビジネスが成功して、毎月50万円の不労所得を上げるようになったら、それはそのまま出資者の担当売上になります。理論上は、売上50万円給与30万円ですから、「会社員だけど」「一日も働かないで」「月給30万円もらえる」が実現できます(今のところ、びりかん社では“一日も働かない”社員はまだ出ていませんが、“月に3日だけ働いて年収500万円”の社員はいます)
これは、社員が、個人として始めることももちろんできます。副業がOKだからです。社内ベンチャー制度のメリットは、税制的にあります。累積黒字の100万円を、自分の給料としてもらおうとすると、所得税などがかかり、例えば手元に残るお金は80万円などになります。しかし、社内ベンチャー制度であれば、100万円をそのまま投資へ使えます。
またチームでやる場合は、社内の「自分も参加する!」という他のメンバーの力も借りることができます。
また「社員」という地位を保ったままでいられる、ということもメリットになります(例えば、住宅ローンなどを利用する場合は、会社員で勤続年数が長いことは大きな信用になります)。
ベーシック給与へのチャレンジ
これらの、自律性、成熟性がベースになるとも思っていますが、私たちはベーシック給与にチャレンジし始めました。
ベーシックインカムが行政単位のものとすれば、ベーシック給与は企業単位のものです。「最低16万円の月収は、どんなことがあっても保証する」とする制度です。とはいえ、会社が倒産してしまっては当然、その約束を守り続けることはできませんから、この制度に共感した全社員で、会社の存続を守っていくことが大切になります。
ベーシック給与は、ある意味「徹底的に厳しい」とは反する面があります。しかし、びりかん式経営では「土台の安心感があるとき、人は自然と成長・貢献・奉仕したくなるもの」と人間をみています。そこへの信頼、信念があります。だからこそ、一人一人の個人ビジョンを大切にし、インサイドアウト、内発的動機こそを、最も大切にしているのです。