社長、あなたの右腕作ります!〜ベンチャー・中小企業経営テクニック集〜

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社員のモチベーションをいかに高めていくか? ~共感するビジョン

      2017/12/30

[2017/12/6 メルマガ配信記事:担当 石川英明]

出典:写真AC

 

今回のテーマは、「社員のモチベーションをいかに高めていくか?」です。この課題は、業界や企業規模を問わず、多くの会社の経営者、人事担当者、管理職の方なら1度は頭を悩ませたことのあるテーマではないでしょうか。

強い組織は、人々の能力を上手に引き出し高めています。社員がその能力をいかんなく発揮し、また自然と高め続けていく土台はやはり一人一人の「モチベーション(意欲)」にあるのです。近年、Googleやセムコなど、人本位の経営を行い、社員の意欲が高まり、能力が高まり、発揮されるように意識して経営されている企業の存在感が増しています。

もちろんビジネスモデルは重要です。

例えば「コンビニエンスストア」というビジネスモデルは成功しましたし、その成功要因において「レジスタッフのモチベーション・意欲」がどれほど影響が大きいかというと、それは怪しいところがあるでしょう。一店舗ずつの成功・不成功の要因としては、出店の立地などの方が大きな影響があるのは間違いありません。

しかし「コンビニエンスストア」というビジネス全体で言えば、調達、出店調査、新商品開発・・・・等々、人々の能力が必要であり、知恵が必要であり、能力と知恵とを出そうとする意欲が必要である、ということは明白です。コンビニA社は、商品開発担当者の意欲が極めて低く、コンビニB社は、商品開発担当者の意欲が極めて高い、となれば、かなり短期の間にも業績においても差が生じることでしょう。

ロンドンビジネススクール教授であるゲイリー・ハメルはその著書において「社員の情熱を引き出せるかどうかが、ビジネスの成功において最も重要な点となっている」という研究成果を発表しています。

※「経営の未来」「経営は何をすべきか」

 

関わる人々の意欲をいかに高めていくかは、経営において最も重要な取り組むべきテーマの一つと言っても過言ではありません。

モチベーションはどのようにして高まるのか?~共感するビジョン

しかし、採用した人材の、社員のモチベーションを高めるというのは、これはなかなか容易ではありません。私たちが、多くの企業に「社員のモチベーションを高めて欲しい」といったご依頼をいただくのは、それだけ経営者が、この課題について取り組みつつも、悩んでいることの証左かと思います。

しかし、容易ではないからと言って「できない」ということでもありません。一つ一つの要素を、丁寧に取り組んでいくことによって「意欲の高い人材」は確実に生まれていきます。

 

よく経営は、プロスポーツチームの運営に例えられることがありますが、プロスポーツチームの運営は、ほとんどの場合において企業経営よりも難易度が低いものです。というのは、プロスポーツチームにおいてはこの「共感するビジョン」を用意する苦労があまりないからです。

プロスポーツの選手からすれば、「もっと競技を上手くなりたい」「勝ちたい」「優勝したい」「よりよい成績を残したい」という気持ちは、自然と持っているからです。例えば、サッカー日本代表の監督をやったとして「呼んだ選手たちのモチベーションが低い」ということはあまりないわけです。

しかし企業経営においては、自社にいる人材に「そのビジョンの実現のために、自分の全力を尽くしたい」と思ってもらえるようなビジョンを用意することを、手間をかけて考えなければ行けないのです。

「そのビジョンの実現のために、自分の全力を尽くしたい」

そう思えるビジョンがあれば、人は自然と頑張るものです。

 

「フロー体験理論」は、人が没頭し、最も集中力が高い状態を生み出す要素について言及していますが、その第一の要素が「目的が明確である」ということです。

※チクセントミハイ「フロー体験理論」

 

これは、その人にとって「この目的に向かって頑張りたい!」「この目的には価値がある」と思えるということです。つまり、ビジョンへの共感・情熱がある状態ということです。

 

「学習する組織」においても、ビジョンについて言及されています。

”共有ビジョン”が重要である、ということなのですが、この”共有ビジョン”はつまり、社員一人一人にとって「このビジョンは、自分のビジョンである」と思えるものであるということです。

※参考図書「学習する組織」

 

一方で「ビジョナリーカンパニー」では、BHAGという概念について解説されています。BHAGはBig Hairy Audacious Goalsの略で”社運を賭けた大胆な目標”と説明されます。

これは例えば小さな町工場が「世界一の飛行機を作る!」といった、自社の現状では到底難しそうな、しかし一方でそれを成し遂げられればそれは本当に素晴らしいと思えるような目標を設定することを指します。

※参考図書「ビジョナリーカンパニー」

このBHAGは重要で、効果的な目標設定であるのですが、これが効果的であるには”それを成し遂げられればそれは本当に素晴らしい”と社員一人一人が想像できていることが重要なのです。そういう意味で、ただ野心的、挑戦的な目標を設定すればよいということではなく、やはり一人の社員にとって「私は、この目標を達成したい!」と思えることが重要なのです。

 

「モチベーション3.0」にあるように、人の意欲が高まるのは外的動機付けでは限界があります。「これを頑張って達成したら、給料を上げてやる」といったアメとムチ方式の外的動機付けでは、人の意欲を高めることには限界があるのです。

※参考図書「モチベーション3.0」

 

一人一人が「自分は、どのような状態を実現したいか?」をしっかりとイメージ、ワクワクする目標を設定できるようになること。これが、社員の意欲を引き出すまず第一歩となります。

 

支援企業の実例

実際に私たちが支援したケースでは、ビジョンを「社員が共感できる」ものに磨くことによって、組織が活性化し、業績が向上したケースが多数あります。

上場したある企業では「社長の頭の中にだけ、壮大で緻密なビジョンがある」という状態でした。ベンチャー企業で大変忙しく、社長も頭の中のことを丁寧に共有する時間を取れずにいました。

しかし、ビジョンの共有を重要な投資として判断し、社員説明用に丁寧な資料を作り、定期的に繰り返しビジョンを発表する場を持つようにしました。

  • 「トップとしてどのようなビジョンを描いているのか」
  • 「そのビジョンが実現されると、社会にどんなインパクトを与えられるのか」
  • 「そのビジョンを実現するために、どのような競争戦略で勝とうとしているのか」
  • 「中期的にどのようなステップで実現しようと考えているのか」

といったことを、当社の担当者がヒアリングしながら資料を作成し、その資料を基に社長が社内向けにプレゼンを行いました。質疑応答の時間もしっかりとりました。

その時間投資をすることで、「この会社で働くことのワクワクが増した!」「社長がなぜああいった判断をしているのかの理由が分かった」といった声が社員から増え、一体感が増し、事業の推進スピードも向上しました。

結果として上場を果たすところまでになりました。

 

またある企業では、社内アンケートを取ったところ「会社の方向性が見えない」「ビジョンが見えない」といった声が多数あることが判明しました。しかし、その会社では会社の理念やビジョンについて、社内の壁にたくさん貼りだしていて、そういったことは少なくとも形式的には共有されているはずでした。

結論を先に言うと、その会社では「5年で、1.5倍の年商50億円を目指す!」というビジョンを明確に打ち出しました。その結果、社員は一丸となって「50億達成のために頑張ろう!」となり、社内から「方向性が見えない」といった声はほとんど聞かれなくなりました。そして実際に、5年後には年商50億円をクリアできなかったものの、約1.4倍ほどの年商を達成するに至りました。

この企業がビジョンを打ち出すことでこれだけ成功したのは「50億を目指す」という定量的で分かりやすい目標を提示したことに加えて“年商50億円の意味や価値”を丁寧に発信したことが挙げられます。

実際、多くの企業で「年商●億円を目指す!」といったことは掲げられていても、それが社員のモチベーション向上に直結しているケースの方が稀なのです。なぜなら「その年商を達成すると、自分にとってどんないいことがあるのだろう?」「単なるノルマじゃないか・・・」といった反応が、社員からは普通に起こるからです。

それをこの企業では

  • 「50億円を達成することで財務安定度が増し、雇用の安定度が増す。つまりみんなより安心して働ける職場になる」
  • 「50億円を達成するためのチャレンジそのものが、刺激があり、やりがいがある」
  • 「50億円を達成したころには社員数も増えている、部下も増えている。部下育成などの経験を積むことができる」

といった、社員目線の意味や価値も丁寧に共有されていたため、社員からしても「よし!50億円頑張ろう!」と心から思えたのでした。

 

ビジョンの提示・共有についてのリスク

リスクというよりは「せっかくビジョンを社員に提示したのに、ほとんど意欲向上につながっていない」となるケースが多数あります。

一つには、前述したように「●億円達成!」といったビジョンが掲げられても、社員からして、それを達成する意味や価値が見えずに「きょとん」となってしまっているケースです。

もう一つには、そのビジョンを達成できたら確かに素晴らしいと思えても「到底実現できるとは思えない」と、社員からして非現実的に思われてしまっていると、これもまたビジョンとしてほとんど機能しません。

三つ目には、そのビジョンを提示したものの、経営陣が、実は心の底からはそれを大事に想えていなかった、と言うケースです。これは組織に大きな悪影響を及ぼします。

例えば、ビジョンや理念と言ったもので「お客様の笑顔を最優先する」といったことを打ち出したとします。それに沿って現場が頑張ったとします。しかし「なんだ、この部署は赤字じゃないか!」と経営陣が怒り出したりします。そうすると現場は混乱するのです。「お客様の笑顔が最優先なのではないのですか??」と。

これは極端な例ではありますが、言語化されたビジョンと、実質の重要なことが乖離していると、組織に大きな混乱を引き起こしてしまいます。その点は注意が必要です。

 

いかがだったでしょうか。今回は、「社員のモチベーションをいかに高めていくか?」を取り上げました。

冒頭でお伝えしたとおり、社員ひとりひとりの意欲が高まり、パフォーマンスが最大化するように働きかけることは、今後、経営において最も重要な取り組むべきテーマになると考えています。

「ビジョンは1度決めたら、ずっと貫き通さなければならないものだ」と誤解されている場合がありますが、内部環境・外部環境ともに変化し続けるビジネスの世界において、不変的なビジョンを打ち出すことに固執することはあまり意味がありません。とはいえ、毎日のように変化してしまっては周囲を混乱させますが、適宜 「今の組織にあったビジョンか」を見直すことは重要です。

この記事が御社のビジョンについて、改めて考えるきっかけになりましたら幸いです。

 

 
 
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 - 中堅・中小企業における【モチベーション管理】, [執筆者]石川英明 , , , , , , , ,